JR八高線小宮駅から歩くこと約10分、淵上日野線沿いに寿司屋(豊鮨)がある。

「あら、いらっしゃい。お客さん初めてね」

穏やかな物腰の女将さんが笑顔で迎えてくれた。

店の創業は昭和44年。

「昔は目の前の通りは寿司屋が10軒以上も営業していて、寿司屋通りと呼ばれた時代もあったのよ。それも昔の話。今ではウチだけになってしまったの」と女将さんは話す。

「ランチがお得ですが」
カウンターの大将が威勢よく声をかけた。
「にぎりのランチ、あと燗酒ね」
つけ台に座り素早く注文した。
届いた燗酒を手酌でクイー……。
華やかでふくよかな香りの酒。
米の旨味がよく包み込まれた酒で、口のなかに広がる米本来のすっきりとした味わいが心地よい。
届いたランチにぎりのマグロ中トロ、マグロ赤身、カンパチ、アジ、イカ、エビ、玉子、梅きゅうり巻は、程よい酢加減の大き目なシャリ。
まずマグロ中トロから取り上げてしばらく眺め、口に入れ目を閉じ味わい、余韻を回顧しつつ酒をちびり。
結構である。
柔らかいが決して歯に絡まない。
寿司屋のようにスピードを要求される料理では、通人は余計なことを言わずにただ黙々と食べる。
寿司屋では妙な馴れ馴れしさを嫌い、黙ってどんどん食べることだ。
粋だねえ。

★メニュー★

茶わんむし525円

たこ酢みそ600円

とりからあげ600円

まぐろ納豆800円

真いか酢みそ800円

ユッケ風まぐろ1200円